木蔭

2026年09月09日号(3面に掲載)
木蔭

久永 晃司/朝ごはん

もともと私は自炊が苦手だった。料理は食材の買い出し、調理、味付けなど難しいイメージがあった。
 小学校の頃、少年ジャンプをいつも一緒に読んでいた友人がいる。彼の家にもよく遊びに行っていた。18年後、その彼と東京で部屋を借りて一緒に暮らすことになった。互いに一人暮らしで、二人合わせれば、いままでの手出しのまま、もう少しまともな部屋に住める。そんな計算もあったが、他人と一緒に暮らしたら、どうなるんだろう、という好奇心のほうが大きかった。
 新しい家は、朝日がとても良く入る部屋だった。私は早起きである。起きて、うがいをして、水を飲み、シャワーを浴びる。髪を乾かし終えるころには腹が減っている。
 彼は朝が弱く、ゆっくり起きる。私は時間を持て余すので、レトルトのご飯を作った。友人と一緒に食べると、うまいうまいといいリアクションをしてくれた。良い反応があると、楽しいので、また作るようになった。
 最初はシンプルなものしか作らなかった。でも褒められていくうちに、徐々に新しい料理に挑戦していった。最後の方では作るのが難しいイメージがあった唐揚げまで揚げていた。
 食べ終わった後の時間もとても良かった。今日は何をするか、これから何をするかを話す時間だった。お腹が空いていると頭に血が回らないのか、あまり何も思い浮かばないが、ご飯を食べたあとでは、次々と考えが浮かんでくる。友人は話しを聞くのがうまかった。楽しい時間になるので、朝に料理を作ることはいつの間にかルーティンになっていた。
 二人暮らしについても、面倒なことは山ほど起きるだろう、続いて半年かな、と思っていたが、楽しくて気付いたら三年半たっていた。
 鹿児島に帰ると伝えたときも、友人は淡々と、「いってらっしゃい、さみしくなるぜ、元気でな」と送り出してくれた。朝ごはんを作ることは、いまでは私の日課になっている。
(久永経営企画室長)

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