木陰

2026年05月27日号(3面に掲載)
木陰

号泣のススメ/兒島 剛 

私には二人の娘がいる。結婚が遅かったこともあり、二人ともまだ成長真っ盛りの小学生だ。ありがちな話だが、この姉妹、まあ性格が正反対である。
 長女は几帳面で生真面目、引っ込み思案な性格。周りの様子をうかがい、人前では決して自己主張しない慎重派。だが、学校の課題や習い事の練習となると話は別だ。上手くいかずに苦悩し、号泣しながらも決して妥協しない。良く言えば努力家、悪く言えばかなりの頑固者だ。
 次女は、自由奔放で感情むき出しの性格。お調子者で、子どもがやらかしそうな失敗を期待通りに全て網羅してくれる。
 皆さんは、国語の教科書に出てくる「スーホの白い馬」を覚えているだろうか。少年スーホの大切な白馬が死んでしまう、あの切ない物語だ。次女の音読の宿題に付き合うと、最初は軽快に大声で読み進めるのだが、後半になると突然号泣し始める。しかも毎回。学期末の感想文に「最後まで泣かないで読めるようになりました」とあるのを見たときには、思わず吹き出してしまった。
 子育てをしていると、わが子に限らず子供たちと接する機会が増え、彼らの貪欲な好奇心や、物事に突き進む圧倒的なパワーを目の当たりにする。昔は自分もこうだったのだろうか。大人になってからの私は、妙に要領を得て苦労を避ける術を覚え、感情を抑えて無難な選択ばかりしていないだろうか。子供たちの姿を見ていると、そう問われているような気がする。
 社会人となり30年近くが経った。これまでを振り返り、これからを思う時、ふと考える。人生を今よりほんの少しだけ濃いものにできたら、と。これからも娘たちの成長に感化されながら、ささいな挑戦でもいい、少しだけ前のめりに生きてみたい。
 まずは心をほぐすことから。外へ出掛けて見知らぬ土地の風情を感じたり、好きな音楽の舞台に触れたり。娘たちを見習って、いつか心から号泣できる日を目標に。
(南さつま市建設部長)

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