鹿児島建設新聞

丸和工業 石塚 剛 氏

Profile

 歩道橋や港の連絡橋などを手掛けるほか、食に関連したタンクやプラント製造では、県内で指折りの実績を誇る。溶接技術を代々受け継ぎ、この2月に創業65周年を迎えた3代目。就職氷河期をかわし、リーマンショックやコロナ禍などを乗り越えた。「何もしないことが一番いけない」と、挑戦する気持ちを忘れない。5月の誕生日で52歳。

 「経営理念は〝いつも熱い心でチャレンジ〟こうした気持ちをなくせば、経営者として終わりかな」。溶接技術を代々受け継ぎ、今年2月1日で創業65周年を迎えた。創業者・石塚満雄氏が62歳の時、現会長の俊雄氏が代表権を引継ぎ、同じ年齢を迎えていた2005(平成17)年、先代から経営を託された3代目になる。
 1918(大正7)年生まれの満雄氏は、子どもの頃中指の怪我を理由に兵役を拒否され、その屈辱を跳ね返そうと八幡製鉄所に就職。現社長の剛氏は、「あの頃、アーク溶接の黎明期。試行錯誤を重ね、腕を磨いていた」と聞かされた。
また満雄氏は「戦後、GHQの技術者への敬意に感服。兵役に就けなかったコンプレックスを吹き飛ばせた」として、59年に鹿児島市南林寺町に現社名で会社を設立する。
 今でこそ中心市街地と言っていい場所。太陽国体があった72年生まれの剛氏にとって「昔は鉄工場などのある町外れ。小学校入学の頃までいました」と当時を懐かしむ。

【工場内写真2点 / 右に溶接作業、左に全景】

 現在地の七ツ島1丁目に移転したのは「小1の2学期から」。事業は創立20周年を迎え、俊雄氏に引継がれる。それまでの間、高度経済成長などを背景に、与次郎ケ浜埋め立てに活躍した土砂水搬用パイプ等を手掛ける。「オイルショック時は小型の油タンクがバカ売れしたようだ」と語る。
 移転と同時に俊雄氏が代表に就くと、油槽所や土木用製品の需要が減少する一方、県下焼酎工場の引き合いが増え、芋焼酎を製造する丸和式蒸留装置の特許も取得。ボイラー溶接士として、南九州第1号の免許取得者だった満雄氏も現役技術者として活躍したという。
 当時は、圧力容器の設計・製造や畜産分野の残渣処理で肉骨粉にするレンダリング装置、飼料プラント設備等を受注。「鋼」や「機械」といった建設業許可を取得し、公共工事参入も果たす。経済はバブル景気のど真ん中だが、時は89年12月、日経平均株価は3万9000円に迫るも、翌年から大幅下落が続いた。

【工場外観写真1点】

 東京の武蔵工業大学(現、東京都市大学)で機械工学を学ぶ。中学から始めたバレーボールは、高校と大学でキャプテンを務めた。「チームを統率できたことは大きな財産。経営者として今に生きている」。15部あった関東リーグで入学当時、第9部。「一級上に凄い人がいたお陰で卒業前は第6部でプレーできた」。
 就職氷河期への移行間もない95年に卒業。入学時点は銀行からの求人もあった。就職活動では、技術系企業の入社試験を受験するも、採用中止の通知に慌てた。「世間の景気の悪さを実感した」と振り返る。
 それでも卒業後、IHIグループに入社。建設部で工事計画に従事し、大型LNGタンクの建設工事の施工管理を任された。施工に必要な機材の設計、現場施工要領の作成、客先との折衝、さらに調達や予算管理まで任され「当時入社二年目。今思えばいろいろな経験が出来て本当にラッキーだった」。3年半の勤務の後、99年にUターン。「東京の大学に出してもらったこともあり、恩返ししよう」と決意した。

【製品写真2点 / 左タンク、右プラント】

 1年間専務を務めた後、33歳で社長に就任。直前、焼酎ブームの到来や狂牛病の影響を受けた特需もあり、事業規模は一気に倍増。一族のルーツだった日置の地で、廃業した工場や従業員の引き受けなどにより急場をしのぐ。この間、今の社屋を新築した。
 「おやじも元気で10年併走。早い時期に引き継いでもらった」と感謝の念が滲む。就任3年後の08年はリーマンショック、11年には東日本大震災。厳しい経済環境にあって、「食に関連した旧来の地元顧客に支えられた」。そして20年、「サクラの花もきれいには見えなかった」とコロナ禍を思い出す。
 現在、県鋼橋梁建設工事協会会長も務める。歩道橋や港の連絡橋など年に1~2件程度。「実績確保どころか技術の伝承も難しい」のが現状だが、「一番いけないのは何もしないこと」と前を向く。「売るつもりは毛頭ありませんが、M&Aで売ってくれないかといわれ続けるような魅力ある会社にしていきたい」。

更新日:2024年03月

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