鹿児島建設新聞

満留建設 満留 智史 氏

Profile

 父の操氏が1979(昭和54)年、当時の串木野市内で創業した会社を2018(平成30)年8月、36歳で引き継ぐ2代目。事業承継時は、建設業に対して「プラスもマイナスも、特別な意識は無かった」と振り返る。一方現在、産業のイメージアップには、新たな戦略も必要と指摘。経営理念に「人を愛し、街を造り、郷土を守る」と掲げ、若き経営者として、時代の荒波に挑戦する。

 6人兄弟のうち、自身は上から2番目。妹の美子氏が経理を担当するほか、いちき串木野市内で土地家屋調査士として独立開業している兄の上小鶴一善氏が社外取締役として経営に参画する。ほか男2人、女1人の計3人は、県外在住で将来も事業に関与する予定はないという。
 社長就任から丸3年。引継ぎのタイミングは、「多くの事業承継を会長自ら見聞きする中、元気なうちに、との考えだった。業界には暗黙のルールもあり、助言がもらえるのは心強い」。経営は「派手にしてはならん。堅実であれ」。承継前から言われてきたことだ。

仕事

 県外に就職後Uターンし、10年前に入社。当時業界は、今のように人手不足ではなかったが、仕事に比べて業者が多く業況は厳しい時代。「ダンピング受注も横行し、適正利益の確保も難しかった。労務単価は今から考えると信じられない程低く、元請も下請け叩きに躍起だった」。
 県外の測量会社に勤務していた兄の上小鶴一善氏も同時期に帰郷。当初、一般管理費を抑える観点から、「現場は一緒にフル出場した」。一善氏は、資格取得していた土地家屋調査の仕事が増え、「二足のわらじを履き続けるのが困難に」。このため、一昨年、法人化し独立した。

集合写真

 帰郷前の2000年代は、長野県知事に就任した田中康夫氏の登場によって「脱ダム宣言」に象徴される風当たりの強い時代。地域の基幹産業と位置づけられても、親世代の敬遠は若年層への影響が否めない。「そうした風潮は、いまだ解消されない部分もある」。それでも、「イメージアップ戦略等により業界も徐々に改善されてきた。いい時期に代替わりをさせてもらった」。
 完成工事高もここ数年、約3億円で推移し経営は安定。内訳は公共土木を中心に、3〜4割を民間などで支える。「下請けでは型枠工事に多くの信頼を寄せてもらっており、今後も柱の一つにしていきたい」。「先代の苦労のおかげで財務状況は安定しているが、例に漏れず人材面には課題が多い」。近年3人が定年を迎え、人材確保に苦慮するが、「資格保有者も多く電気を除いてできない工事はない」。

会社全体

 県に対する「イクボス宣言」や経済産業省が認定する「健康経営優良法人2021」などにも登録。ホームページも立ちあげブランディングに配慮する。ただ、苦心を重ねつつも、福利厚生面では大手にかなわない。地元就職の選択肢を示せる企業となるには、「他社との差別化はもちろんだが、産業として〝イメージアップ第2弾〟も必要ではないか」と指摘する。
 建設業従事者が事件の容疑者の場合、職業が土木作業員とされることが多い点について「産業への偏った見方を少しでも変えていき、次の世代に引き継ぐ責任もある」と、自負を覗かせる。「土木は社会生活の根幹を支える産業の一つ。災害時の復旧を含め、これからも無くてはならない仕事」と、若き経営者の使命感がにじむ。
 商工会議所の青年部活動では会長も経験。地域経済の元気部隊の一人として今でも忙しく、子どもたちを趣味の釣りには誘えそうにない。なな夫人と4人家族。いちき串木野出身。38歳。

更新日:2021年8月

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