鹿児島建設新聞

鹿児島土木設計 篠原 誠

Profile

甲南高校から九州大学に進むが2年で自主退学、仕切り直しで国土建設学院に再入学して土木地質工学を専攻、基礎をじっくり勉強した後家業を承継する。測量士、地質調査技士の資格所有。専務、副社長を経て平成5年2月から現職。モットーに掲げる「温故知新」は、古いものごとの中に息づく先人の知恵と、最新の調和を結集させながら地域社会に温もりとエネルギーを注げる会社を意味している。好きな言葉は「鉄は熱いうちに打て」。趣味はプラモデル作製と映画鑑賞。一男一女の4人家族で、現在は夫婦2人暮らし。鹿児島市出身の59歳。

 同社は、福岡市を中心に不動産会社に勤めていた父・正治さんが昭和43年に「これからは社会資本整備をする上で、コンサルの仕事は欠かせない」と鹿児島に帰り、鹿児島測量設計社を個人創業したのが始まり。昨年、節目の創業50周年を迎えた。2代目の誠社長は1人っ子で、高校時代から中学生を相手に家庭教師のアルバイトをしていた経験もあり、将来は日本史の教師になる予定だった。しかし、結局は一人息子の宿命で、家族会議の末に九大に進学、理系(資源工学科)を選択せざるを得なかった。しかし、九大在学中に「嫌いな勉強をしてもつまらない」と自主退学。正治さんの説得もあり、コンサルタントの役割、社会的意義の重要性を考え、仕切り直しで専門学校に再入学、家業承継への道を進む。

 「まさに人生の大きな転換点だった」と、誠社長が振り返るように、正治さんのコンサル業界に賭ける熱い思いと粘り強い説得が誠さんの心を突き動かし、家業承継を決断させた。社長室に掲げられている創業者・正治氏の遺影と「信用・創造・熱意・技術」をベースとする社訓が同社の発展とコンサル業界の将来を見守る。
 国土建設学院では土木地質工学を専攻、測量士、地質調査技士の資格を取得。57年4月に平社員として入社、「まず現場から」と、測量、設計の現場を掛け持ちで担当、同社が業界に先駆けて導入した電算自動システムづくりに携わる。同61年4月には専務に就任、営業部門を統括、営業の第一線で活躍する。

鴨池運動公園

 2代目として入社した時、中堅社員として将来を嘱望されていた社員が相次いで辞めた。「自分たちは先代の正治社長を慕ってついてきたのだから」というのが理由だった。「会社としてこれから基盤固めに入ろうとする大切な時期。正直言って悔しかった。残った社員達と一緒に『いつかは見返してやろう』と誓い、精進した。
コンサル業界は、社員の資格保有者数で入札の格付けが決まる。資格取得の重要性を説き、技術評価を上げるためのスキルアップに力を入れた。大学時代に学んだ地質では、誠社長自身、チャーターメンバーに入るほど腕を上げた。こうした地道な取り組みで資格取得者を増やし、難関レベルの技術士11人を含めRCCMなど、その数は現在延べ200人を超える。資格は個人的に取得するものだが、社員の結束を強め地域の未来図を描くプロフェッショナル集団としての自覚向上には欠かせない存在。最近では、専門性の細分化が進み、資質も変化しつつあるが、技術、知識を深めるという根幹はいつの時代も揺るがない。「一貫性を保ちながら地道にその道を究めるという専門性を大切にしたい」と、同社の伝統として受け継がれている。同社は年功序列ではなく、人事考課による評価を優先した昇給・昇格を実践、資格試験に合格した職場の先輩が講師となって実践的なプログラムで資格取得を応援する体制も出来上がっている。「切磋琢磨しながら県外に対抗しうる技術の確立」が誠社長の口癖だ。

桜島スマートIC

 こうした中で様々な現場を経験、実績を積み上げてきた。この中で特筆できるのは、40年間続けている桜島の降灰量調査。火山防災の観点から県内各地に降り積もった火山灰の量や質、特性を探る参考値となるデータ収集の一環で、今後法面、防災面での活用への期待が高まる。「地盤の特性を探るという観点から欠かせない作業。なんでも日々の積み上げが大切だということを学んだ気がする。まさに会社経営にも通じる」と、誠社長は力を込める。

会社風景
平成8年に東開町に新社屋を移転後は、社員食堂、トレーニングルーム、男女休憩室も完備。働き甲斐があり、居心地のよい会社、そして社長との心の距離が近い会社づくりに力を入れている。偶数月の第一土曜日には社員全員で、地域の清掃活動を実施、「微力ながら地域貢献活動の一助に」と位置付ける。こうした活動はアットホームな雰囲気づくり、社員同士の連携強化にもつながっている。
 所属する業界関係では、担い手育成の観点から工業系高校への出前講座やRCCM受験対策講習会や各種技術発表会に積極的に取り組む。
 「これからは『オイガ、オイガ』では駄目。お互いにみえを捨て、バランスの取れた連携プレーで、変化の波を読み解き持続的に安定成長を図る時代。業界としても大きな宿題。将来を見据えた合理的なM&Aも必要」と、様々な視点での取り組みを示唆する。

更新日:2019年11月

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