鹿児島建設新聞

建設技術コンサルタンツ 土川 武文

Profile

鹿児島実業高校から攻玉社工科短期大学土木工学科に進学、東京の道路技術研究所に10年間勤務後、恩師の誘いもあって昭和58年2月㈱建設技術コンサルタンツに入社。総括部長、専務、副社長などを経て平成29年4月から現職。RCCMなどの資格所有。2人の子供は独立、孫2人。現在は妻・京子さんと2人暮らし。趣味はカメ、メダカ、インコなど小動物の飼育。常に心穏やかに生きることを心掛け、「週末は孫と遊ぶのが楽しみ」と好々爺ぶりを発揮する。好きな言葉は誠心誠意。いちき串木野市出身の63歳。

 「鹿児島に帰ってこんか」。鹿児島実業高校の恩師・上妻靖春先生からの一本の電話が人生を変えた。ちょうど仕事にも慣れ、東京の生活が面白くなってきたころで、後ろ髪を引かれる思いで帰郷した。
 土川社長は昭和58年2月、上妻先生が一年前の昭和57年2月に創業した建設技術コンサルタンツの技術者として迎えられた。実直で熱血漢あふれる恩師の誘いだけに断れなかった。想いを形に、そして街をデザインする仕事という憧れもあり、誘われるままに帰郷、上妻先生が立ち上げた会社への就職を決断した。高校在学中、上妻先生は厳しかった半面、愛情あふれる指導ぶりは評判で、多くの生徒に慕われていた。

 創業の地は、先生の自宅がある鹿児島市下伊敷町。隣接地に建てられたプレハブの事務所だった。わずか4人でのスタート。「1日も早く会社を軌道に乗せたい」という一念で、頑張った。上妻先生と2代目の安水節社長(現相談役)の2人からは「建設コンサル業は、会社の資格者数で評価付けされるため技術者の育成がなによりも大切。営業は俺たちに任せて君たちは技術で頑張れ」と激励され、技術スタッフは結束して机に向かった。仕事の需要に合わせ社員も会社の規模も徐々に拡大。平成6年には現在地の同市伊敷台に本社を構え移転した。現在の社員は65人。
 創業時からの合言葉は全員経営。経営理念は「親しまれ愛され信頼される企業」「職員が誇りを持てる企業」「明るく活気に満ち健全な発展を続ける企業」を掲げ、具体的には、確かな実績と新しいことへの挑戦によって、お客様から選ばれ続ける企業を目指し、社員が助け合い、そして働きがいのある楽しい会社が経営ビジョン。さらに現在は、顧客本位・独自能力・社員重視・社会との調和—の4本柱を骨格とした経営品質の向上に社員一丸となって取り組んでいる。

業務表彰実績

 コンサルは、技術的問題を解決し、事業者に代わって技術的提案や必要な調査、企画、立案をする。求められるのは総合的な提案と確かな技術力。上妻社長が得意としていたのは河川、橋梁、砂防、道路部門で、実績を積み上げ、強みを発揮した。
土川社長は入社以来、技術系の係長、課長、次長、部長を経て統括部長、専務取締役、副社長として会社を支え、平成29年4月から6代目社長に就任した。一貫して技術畑で通した生え抜きで「コンサル業の最大の武器は資格取得。卓越した技術こそが生命線」と言い続け、難関の技術士は延べ17人、資格取得者数は延べ241人を数える。この間、数多くの事業を手掛け、九州地方整備局、県土木部・農政部などの優良施工業者、優秀技術者としても表彰実績がある。平成29年度経営革新推進賞も獲得、「全員経営の賜物」と、さらに研鑽に磨きをかける。
思い出に残っている現場は、平成5年鹿児島市の8・6水害や平成9年の出水市針原の豪雨災害。針原の豪雨災害では、その日に社員を追加派遣、総動員体制で見積作成、予算の概算づくりなどに当たった。「相談や要望は、相手が困っているから生まれる。即決で事に当たる。この時が頑張りどころ」と、タイミングを逃さず、率先して陣頭指揮に当たる。「社員のミスは私の責任。謝りに行くのは私の仕事」「たとえ嫌われても言い続けるのが私の役割」と、間髪入れずに相手に会って詫び、社内会議では再発防止策をみんなの前で発表、原因究明、改善策を練る。オープンで意見を出し合う全員経営は、ステップアップの原動力になっている。

測量風景

 コンサル業界の今一番の課題は、くじ引き落札が頻発、経営の根幹となっている受注が運任せになっている状況も見受けられる。「分母である件数を獲得、受注の確率を上げる対策が必要。受注が減っても生き残れる体制構築を整えたい」と、技術提案型の総合評価方式、公募型プロポーザル方式などの積極的な参加を模索する。受注できなかった物件に対しては社内の全体会議で採点、評価を行い、何が足りなかったか徹底検証する。次の受注獲得へ向けての反省、勉強を欠かさない。

 2年前には国土交通省のICT(情報・通信技術)施策を受けていち早く、社内にI-Con推進室を立ち上げ、熊本大学などと連携、ICT、CIM活用など三次元モデルの活用策、ドローンの利活用と事業効率化へ向け多様化するニーズに対応している。同社は、県内では上位10社の中堅。2代目までは生え抜きの社長だったが、3〜5代目は発注者である県、国から経営トップを招き入れている。「甲乙対等の関係構築など参考になることが多い。発注者側からモノを見る視点も養われる」と前向きにとらえてのこと。こうした複合的な戦略は、同社の伝統。先を見通す先見的なモノの考え方、堅実なプロ意識経営、和の全員経営は、厳しさと思いやりの創業の精神に負うところが大きい。
 「恩師からの声掛けがなかったら、今の自分はない。心から感謝している」という土川社長の目には、絆の深い師弟愛が感じられる。技術と師弟愛が実を結んだ全員経営は、社屋の壁に刻まれたConstruction、Engineering、Consultantの頭文字CECが物語る。人類、地球環境にやさしいグリーンの文字は、今後も会社の成長と共に輝き続ける。

更新日:2019年9月

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