鹿児島建設新聞

ブンカ巧芸社 峯元時秀

Profile

6人兄弟の長男。甲東中学校から玉龍高校を経て神奈川大学経済学部経済学科を卒業。大学時代から家業の仕事を手伝うようになり、看板業の資格を取得し、仕事のイロハを修得、2代目として事業承継の決意を固める。営業、12年間の取締役を経て昭和59年4月代表取締役社長に就任。平成25年から現職。同30年には看板業界の地位向上で黄綬褒章授章。息子2人、娘1人の5人家族。趣味はゴルフ、ドライブ、旅行。小学校時に始めた柔道は4段。好きな言葉は猪突猛進。業界関係役職は全国屋外広告士連合会副会長など多数。曽於市出身の71歳。

 同社は昭和28年、経済連の澱粉工場検査技師だった父親の時則氏が文化開発産業㈱を創業したのが始まり。看板、鉄骨、ボイラーの3部門があり、看板業だけに専念した。同33年に文化工芸社、同59年にブンカ巧芸社に社名変更した。優良顧客に恵まれたこともあるが、自動変色装置のネオン看板で特許を取得、これが当たり飛躍的に成長した。県内の三菱電機ストアの看板の内装・外装、経済連の看板などを一手に引き受け、成長軌道に乗った。
 大学の進学時、文系に進む友達が多かったことから「自分も…」と軽い気持ちで経済学部を選択した。しかし、大学に進んでから父の時則さんから頻繁に「仕事を手伝え」と電話がかかってくるようになり、看板屋としてのイロハをたたきこまれた。「やはり、理系を選択すべきだった」と悔やむことも多かった。

 広告看板業は、手書きの時代は職人技が求められる仕事。同社も創業当初は腕のいい職人による外注に頼っていた。しかし、経済成長とともに手書きのトタン看板からネオン管、LEDへと変化。本格的なデジタル化で多様化に拍車がかかり、デザイン、製作、施工力が問われるようになり、業界は大きく変容を遂げた。 昭和46年に家業の文化工芸社に入社。営業に配属され困ったのは引っ込み思案な性格。顧客回りでも玄関先で一歩踏み出すのに苦労したが、勇気を出して飛び込んだ。そのうちに営業の面白さを覚え、契約が取れると「もう一軒、もう一軒」と、足が軽くなった。

会社風景

 事業継承時に時則氏から口酸っぱく言われたことがある。それは「本業だけに徹すること」「他人の借金の保証人には絶対なるな」の2点だった。それ以降、印鑑の管理は妻・みゆきさんに任せ、堅実経営に徹した。「経営者として厳しい時代を生き抜く術(すべ)を教えたかったのでしょう。親父はとにかく仕事に厳しく怖い存在でした」と、振り返る。
 時代の変化とニーズに合わせ最新の工作機械導入や社員の資格取得を促し、企画・製作・施工の一貫体制を確立し、福岡、東京営業所開設などネットワーク強化を図った。「この仕事で一儲けしてやろうとの一念で仕事をすると必ず振り落とされる。繰り返すうちに商売とは、仕事とはと、自問自答するようになり、お客様の商売繁盛、喜びを願って打ち込んでこそ会社の繁栄にもつながる。ここまでやって来られたのは頑張る社員、仕事を下さるお得意様、協力業者のお陰」と、気づかされた。感謝の念を持ち続けることこそが商売の原点と、お客様の商売繁盛に寄与する企業、顧客第一主義を貫く。「ものづくりは人づくり、100年企業を目指して」と、次代へ向けての企業像も明確だ。

 ハードからソフトまで業務は多種多様。スタッフも増え、社員の数だけ苦労や楽しさがある。仕事をする手先、視線の先には〝ものづくり職人〟としての熱い眼差しがキラリと光る。ここまで培われてきたブンカ魂は、昔も今も色あせることはない。
 平成25年には鹿児島市石谷町に事務所・工場(2棟で2099㎡)を移転、創業55周年を機に2人の息子(社長に信明氏、専務に秀爾氏)に経営をバトンタッチ、現在は会長としてサポートに徹する。変化の速い業界の将来を見据え、デジタル化の到来に合わせた対応が光る。ベテラン経理士の下で2人を修業させ、数字に強い経営者に育てる一方で、経営の新機軸として営業、デザイン、管理課、文字製作課、製作課、シート課、取付課、メンテナンスのラインが連携して動くよう組織の体系化を図った。このため一貫した製作ラインがしっかり機能している。若手経営者とスタッフが切磋琢磨しながら創業60年を迎えた企業に新風を吹き込んでいる。

社内風景

 社長引退後も業界の地位向上、会員の資質向上に意欲的。平成27年2月に北海道で起きた看板落下事故は「業界にとって大きなダメージ」と、建設業許可の業種区分で「30業種目の屋外広告工事業の新設を目指したい」と、愛車のキャンピングカーで国内の業界団体を全国行脚。看板業種の新設協力を強く訴えて回る。「解体業も業種指定まで20年かかった。地道な努力はいつか結実する」。その情熱と行動には頭が下がる。

更新日:2019年6月

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