鹿児島建設新聞

久保工務店 永池重久

Profile

鹿児島工業高校建築科卒業。関西の建設会社に17年間勤務後、昭和60年に久保工務店に入社。常務取締役、専務取締役、副社長を経て平成17年から現職。一級建築士、1級建築施工管理技士の資格保有。県建設業協会日置支部長。妻・千尋さんと2人暮らし。趣味は読書。好きな言葉は「苦あれば楽あり」。南さつま市金峰町出身の69歳。

当時の久保工務店

同社は昭和32年、千尋さんの父・久保廣雄氏が立ち上げた久保林業が前身。37年には、当時としてはまだ珍しい中古の重機を購入、農道整備やミカン畑の造成などを次々に請け負い、順調に業績を拡大した。会社は昭和39年に有限会社、51年に株式会社に組織変更。廣雄さんの次男・義郎さんへとバトンタッチされ、現在3代目。創業者の思いをしっかり受け止め、高い技術と実績をベースに経営基盤を築き、実力のある中堅クラスに育った。

当時は、ブルドーザーを運転できる人もまだ少なく、重機メーカーの職員が運転操作を手ほどきする時代。廣雄さんは「あんな高いものをよく買ったものだ」と、本人の回顧録で回想している。事業のやり方次第では、儲けも大きく羽振りのよかった時代。県外の仕事に手を広げ始めた昭和41年、思わぬ転機が訪れた。ある発注元が倒産、多額の工事代金が回収出来ない事態に陥ったのだ。会社の体力がついていない時の出来事で「会社経営から身を引くことを真剣に考え、悩んだ」という久保社長に社員たちが「給料の支払いが遅れてもいいから、会社を続けてくれ」と訴え、厳しかった危機を乗り越えた。一緒に苦労してきた社員たちの言葉に発奮。大手ゼネコンの下請けとなって技術力を高めながら現場の仕事屋に徹することを決意、受注獲得に走り回った。

ゼネコンの下請けといっても、そうそう簡単になれるものではない。作業着のまま仕事の合い間を見つけてはゼネコンの支社を訪問して頭を下げて回った。この甲斐あって、大型団地の造成工事や自動車道の工事が回ってきた。「誠実な考え、確かな技術、豊かな実績」を経営理念に掲げ、地道に取り組んだ成果が実を結んだ。困った時には仲間同士で助け合うという結束力は、この時に育まれた。永池社長は「引き継がれた伝統こそ大きな財産。これは〝チーム・久保〟のよき伝統。そのためには、社員、経営陣が一枚岩にならなければならない」と、強調する。

廣雄さんが加治木工業高校建築科卒業だったこともあり、建築を大事にしようとの思いから社名を工務店とし、建築部門を強化、賃貸マンションの建設にも力を入れた。地元の伊集院町、国分市には自社保有の賃貸用オフィスを建築した。

トンネル工事

会社として受験料負担や手当など社員の資格取得には、これまで地道に取り組んできたが、ゼネコンの下請けをすることで社員の技術力は数段レベルアップを遂げた。社員2、3人でミカン畑の造成から始まった創業だったが、事業拡大とともに従業員も増え、喜入の日石備蓄基地、川内原子力発電所、九州新幹線鹿児島ルートのトンネル工事など数多くの大型プロジェクト事業に関わることで、さまざまな現場で最新の工法などを経験、着実に技術のレベルも上がった。「多くの現場が社員たちの技術、技量を高めてくれたことに感謝したい。より多くの現場を経験すると顔つきがたくましくなって帰ってくる。そのことが何よりもうれしいですね。近年、公共工事も減少、量より質の時代の転換期に入りつつある。社員は家族と一緒。利益を社員に還元し、情報を共有しながら社員と共に歩む企業を目指したい」と、永池社長は自然体の経営に力を入れる。次の社長候補は義郎さんの長男で現在管理本部長の廣之進さん。未来を見据えて、その指導にも力が入る。

社員と現場

総合建設業として、こだわり続けているのは安全と技術、そしてこれらをを支える人材の育成。平成12年には日本品質奨励賞TQM奨励賞を受賞。同11年に品質ISО、15年に環境ISОを取得、建設業をけん引するプロフェッショナルとしての意識も一段と高まりつつある。工事は、県内、県外含めて約20の現場を抱える。人手不足が業界の課題として浮上しているが「魅力ある会社づくり、若手の採用・育成、4週7休制の定着など、着手しなければならない問題点を検証中。充実感があり、楽しく働ける職場づくりへ向けて状況を見ながらまず一つひとつクリアしたい」。

目指す企業像は、誠実に業界ニーズに応え、地域密着で社会貢献できる企業。3代目は、社業の歴史をひも解きながら「昔も今も変わらない。コツコツ泥臭く賢明に」と、噛みしめるように言い切った。同社は本年、還暦の創業60周年を迎える。

更新日:2019年2月

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