鹿児島建設新聞

エリアトーク 山之口 弘樹 氏

Profile

 創業者の大田育広氏に「人間愛」を学び、義兄で現社長の安孝(やすのり)氏とは運命共同体。地域コミュニティの安全・安心を無線でつなぐ事業を展開する。座右の銘は「温故知新」。7月に迎える誕生日で44歳。

 安孝社長の父親となる育広氏が1988(昭和63)年、霧島市国分にアマチュア無線の機材販売店を開業。自らの好きが高じて脱サラして開いたとされる。99(平成11)年から「CQステーション」の屋号を掲げ本格的に商売を開始した。
 「いわゆるハムショップ。今で言うSNSみたいな形で使っていたのかな。当時、アマチュア無線がバリバリ楽しめていた頃ですよね」。山之口専務は、安孝社長の妹・豊美(同社取締役)さんの伴侶として、創業当時に想いを馳せる。
 不特定多数に対する「CQ呼び出し」が前提のアマチュア無線は、災害時の通信手段としても有効だ。阪神・淡路大震災では、電話回線が壊滅状態の中で大活躍した。2005(同17)年、現社名のエリアトークに変更すると、翌06(同18)年には防災行政無線などとの接続が認められた。

戸別受信機&放送卓

 社名の「エリアトーク」は、同社主力商材の通信システム「エリアトーク」と同名で、「防災無線のミニチュア版をイメージした、地域コミュニティ内の情報伝達ツール」として自治会や公民会(館)、大規模公園などでの利用があるという。無線機販売のほか、放送卓や戸別受信機、送信アンテナなどの製造・販売などを担っている。
 事業は、全国市場を対象に展開しており、公園では大阪府の「万博記念公園」や宮崎県の「平和台公園」などに導入実績がある。また、活用先には、有線による館内放送が行われていた大規模マンションや工場などもあり、「線の張替え作業が不要だ」として評価がある。
 それでも、山之口専務は、「インターネットが当たり前の時代。〝もしもし、はいはい〟の伝達だけではダメだ」と将来を見据える。「BCP対策の面からも有益だが、音声プラスαの連携によってどういう提案ができるのか。今後のポイントになっている」。

社屋外観

 豊美夫人とは、霧島市出身という同郷繋がりで、ともに県立国分高校は一つ違いの同窓生。また、夫人と安孝社長との間で義理の次兄となる昌宏氏が、同校サッカー部の一級上の先輩として、二人をつないだ。現在、同市内で料亭「和くうかん」を営む。
 山之口専務は、入社以前、鹿児島市内の運送会社に勤務し、航空貨物の取扱いを担当。豊美夫人は、霧島市内で医療事務を経た後、入社した。現社長の安孝氏は、東レで炭素繊維による製品開発に従事するエンジニアだった。
 専務によると、創業した育広氏は「ひと言でいうとエンターティーナー。人を楽しませるのが好きな人だった」。当時、既に深刻な病を抱えながらも、「エリアトークの生みの親として、顧客への熱い想いを持った語りに触れることができた」と偲ぶ。

社員等集合写真

 専務の入社は11(同23)年4月、育広氏の体調が悪化した頃だった。豊美夫人は既に入社しており、「少しでも力になれれば」と。ただ「当時、何かを教えてもらったという記憶もなく、先代の社長からは〝人間愛〟を学ばせてもらった」。そして翌年1月、逝去。「育広を愛してくれた人から助けられたことが大きい」と振り返る。
 この年の春、安孝氏は東レを退職し入社。18(同30)年の社長就任まで、母親の陽子夫人が代表を引き継ぐ。このため、現在に至るまで山之口専務が営業を担当し、安孝氏が技術的な部門を分担。事業承継に話しを振ると「義理の兄(安孝氏)とは二つ違うだけ。二人でやっていって、次の世代にバトンタッチしたい」と、運命共同体を強調する。

更新日:2023年05月

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