経営分析編その8
【勝ち残りの条件とは】
この未曾有の厳しい経済状況において生き残っていくには、他社の追随を許さない「競争力」の育成が必須です。この競争力には次の2つの要素があり、一つは財務力つまり「経営の品質」の向上であり、もう一つは品質・コスト・納期といった「製品の品質」の向上であります。そしてこの二つは車の両輪のように相互に依存しあう関係であります。この二つをいかにして自社独自の手法で向上させていくかが勝ち残りの条件となります。今回はそのうち建設業者が苦手とする「経営の品質」に焦点を絞って進めて行きます。まず「経営の品質」を診る重要な資料である「決算書」のポイントを診ていきます。
経営分析編その9
【社長!勝ち組か負け組かはここを診ればわかる1】
「勝ち組」「負け組」という言葉も浸透しておりますが、決算書より診た建設業におけるそれぞれのパターンを5回に分けて説明します。ぜひ、自社の決算書を数年分準備し勝ち負けどちらの組のパターンに自社ははまりつつあるかを自己診断してください。
診るポイントの一つ目は「総資産のスリム化」であります。完工高が同じであればできるだけ総資産が少ない方がこれからの勝ち組になっていくということであります。資産特に固定資産が多いとその購入のための借入も多く、その返済のための資金繰りに追われたり、実際にはあまり使われずほったらかしとなり金の無駄遣いだっただけといった場合も多々あります。また流動資産についても、完成工事未収入金・未成工事支出金・仮払金・立替金などの中に実際には資産価値の無いものがずっと以前より計上されたままになっている場合もあります。このような状況を打開するには、①遊休資産の売却②不良債権の貸倒償却などが考えられます。ちなみに業種別平均数値として総資産回転率(完成工事高/総資産)を揚げておきます。自社との比較検討の参考にしてください。[土木1・6 建築1・8 電気1・6 管2・0 舗装2・0 塗装2・0 造園1・7(CML資料より)]
【社長!勝ち組か負け組かはここを診れば分かる2】
ポイントの二つ目は「自己資本の充実」であります。企業経営を行うには、当たり前のことながらさまざまな「資産」が必要であり、その資産を購入するためには「資本」を調達しなければなりません。資本には金融機関からの借り入れや材料や外注の未払い分といったものを中心とした「他人資本」(貸借対照表の負債の部に相当)と株主からの出資や利益の累積といったものを中心とした「自己資本」(資本の部に相当)とがあります。この他人資本と自己資本とのバランスが崩れると企業経営の「安定性」が損なわれることとなります。他人資本は通常一定期間内に支払わねばならない「リスク」が生じその支払いのために無理な受注合戦もせざるを得なくなる場合もありますが、自己資本は通常そのようなリスクは生じません。ですからなるだけ自己資本を多くし他人資本を減らすことが勝ち組となっていくための条件となります。しかしながら、この厳しい経営環境の中で利益を拡大しての自己資本の充実は難しいこともあり、株主からの出資による増資が最も現実的な方法であります。なお、代表者関係からの借り入れ等がある場合は、わざわざ現金で出資するのでなく、その借入金を現物出資手続により資本金へ取り込んで増資することも可能です。手続きなど詳細は専門家へご相談ください。
さて、今回も自社の決算書を数年分準備し、勝ち負けどちらの組のパターンに自社ははまりつつあるかを自己診断してください。なお、このポイントは金融機関もしっかり押さえているので注意して確認してください。
【社長!勝ち組か負け組かはここを診ればわかる3】
診るポイントの三つ目は「無理の無い固定資産投資」であります。固定資産は長期で使用するものですので、その取得するための資金の源泉はまず自己資本(返済のリスクが少ない)によらねばなりません。これで足りればいわゆる無借金経営となります。それで足りないと次に長期の使用にあわせて返済期間が長期の借入をします。ところが会社によってはさらに返済期間が短期の借り入れで補う場合があります。この場合は長期間かけて稼ぎその稼ぎから長期間かけて返済するべきものが、返済だけが短期間となり当然他の支払いに影響し資金繰り悪化の原因となります。固定資産への投資額は自己資本と固定負債の合計額以内で行うことで経営の健全性を保つことができ「勝ち組」へとなっていきます(※固定負債も少なくなっていくに越したことはありませんが、現実の厳しい状況では無理な返済はかえって資金繰りに悪影響を及ぼしかねないので決してそのバランスは間違えぬように)。対処法としては、①不要な固定資産の売却等による借入金の返済②金融機関への短期借入金の長期借入金へ条件変更依頼などが考えられます。
【社長!勝ち組か負け組かはここを診ればわかる4】
診るポイントの四つ目は「運転資金に無理がないか否か」です。左の式で計算した金額が大きいほど運転資金に余裕があり流動性が優れていることとなり「勝ち組」へとなっていきます。
(式)買掛債務(支払手形・未払金等)+未成工事受入金-売掛債権(受取手形・未収入金等)-未成工事支出金
対処法としては、①売掛債権の早期回収(場合によっては決算期の変更も検討する)②支払計画の管理(式でいくと買掛債務は多いほど良いとなるが、現実は価格交渉など不利なことも多いのでしっかりと計画管理する)。
なお、式の中の項目は経審のY評点の計算に影響のあるものですので、そのことにも留意して検討する必要があります。
【社長!勝ち組か負け組かはここを診ればわかる5】
診るポイントの最後の五つ目は当然のことながら「利益は出ているか」です。完工高は同じでも最終の利益を多く稼げる会社は「勝ち組」となるわけです。対処法としては、①工事原価の見直し(常に仕入・外注は相見積りを実施しているか?)②各種経費の見直し(事前に予算化してあるか?現場だけでなく管理部門特に経営幹部関係も検証しているか?(聖域なき改革))③事業計画「実践」の徹底化(ISOはその導入目的を達成しているか?)などである。

