Profile

創業者・辰雄氏の次男。川内実業高校土木科を卒業、家業を手伝いながら仕事を覚え二代目社長に就任。平成29年から会長。長男・輝蔵氏、三男・勝蔵氏の３人で経営を盛り立てる。(株)外薗運輸機工、外薗建設工業(株)、川辰オートリサイクルなど外薗グループ企業10社を率いる。HOKAWNの通称で通る、押しも押されぬクレーンリース会社に育てる。鹿児島県建設業協会川内支部副支部長。子ども３人は独立、夫婦２人暮らし。薩摩川内市出身の68歳。好きな言葉は真実一路。

柔和な笑顔と穏やかな語り口からは想像もできないほど、企業人として秘めた情熱にあふれる。「目指すのは頼りがいのある日本一のクレーン屋。そのためには優秀なオペレーターを育て、安全第一に仕事の拠点を増やし全国展開したい」。さまざまな現場に機動力と技術力で対応する男の背中は逞しい。業界はデジタル社会を迎え、人手不足対応からAI、IoT、ビッグデータ活用が期待される時代。「IT技術も大切だが人材マネジメントがカギを握る。人の手による仕事の重要性は変わらない。最終的には人が支える」。これまでの多くの経験をしてきた経営者の言葉は重い。

同社は昭和35年に父・辰雄氏が木材運搬の外薗運送として創業したのが始まり。神戸の自動車整備工場で修業をしながら貯めた資金で中古の６ｔトラックを購入、当初2、３人でスタートした。「創業当初は仕事もなく、油代、タイヤ交換にも事欠くほどだった」と、達蔵氏は当時を振り返る。「決してうそをつくな、お客様を大切にしろ、時間を守れ、念を入れた仕事をしろ」が口癖だった。頑固おやじの小言は、今もしっかり受け継がれている。「商売は信用が一番。持ち掛けられた仕事は断るな。始めと終わりを大切に、そしておつきあいは末永く。お金の支払いは現金で」という仕事訓を生涯貫いた。経営基盤がやっと整い「さあ、これから」という時に病に倒れた。60歳の人生だった。

若いころは「考えるよりまず動くタイプ」と自らを評する達蔵氏。動き出したら真っ正直に前進する。「親父の教えがあったから、今の自分がある」と言い聞かせるようにうなずく。誘致企業の進出、火力発電所、原子力発電所建設、大型プロジェクト事業など時代の波にうまく乗った一面もあるが、ここまで来るには並大抵の苦労ではなかった。兄弟３人の名前には蔵の文字がつく。それぞれが大きな蔵を持ち、文殊の知恵で頑張るように—との親の思いを胸に刻み、仕事に励んできた。

会社が大きくなる転機となったのは、昭和46年のクレーン購入だった。当時、薩摩川内市内でもクレーンを保有している会社は４社しかない頃で、まさに引っ張りだこ。各現場のタイムスケジュールに合わせ、夜間作業にも積極的に対応した。勝蔵氏が営業に回り、達蔵氏が現場を担当した。忙しい時は電話一本で数百万円、数千万円の仕事が受注できた頃もあった。受注から完成まで息を抜くことなく、「外薗に任せてよかった」というお客様の感謝の言葉を励みに経営を安定軌道に乗せた。

建機産業は、ITを用いての付加価値を追求した商品の市場投入が進む。GPSと通信システムを利用、車両情報を遠隔管理する時代。橋桁の吊り上げ、据え付け作業などは、まさにミリ単位。２台で行う設置作業はオペレーターの息が合わないと事故につながる。運転席にコンピューターが搭載され、モニター画面を見ながら操作する。１台数億円の高額なクレーンだけに誰でも簡単には操作できない。経験、技術ともに高いベテランのオペレーターは必要不可欠だ。

クレーンリース事業部では、全油圧12〜550ｔ、クローラ55〜60ｔまでシリーズ化して揃え、物流事業部は超大型特殊トレーラー28〜100ｔ積トレーラーまで保有。またトラック、ダンプ、高所作業車、一般貨物自動車運送業、超長尺物運搬に対応する体制を構築。大型特殊免許などの資格保有者は150人にのぼる。グループの従業員は380人。

業界は、市場ニーズを見極めながら自社購入、レンタル機を中心にした対応への切り替えと、業者間の体力格差もあり、車両購入も二極化が進む。

クレーンリース業を主軸に重量物輸送、設備機器据え付け、橋梁架設工事などの事業を展開する同社では、大型クレーンを活用した各種工事は、より一層の卓越した技術、経験が問われる。これまで培ってきた確かな「技術」「経験」「品質」を武器に、仕事を通じて地域・社会貢献できる企業を目指す。HOKAWNの誇りを持った社員たちが、きょうも全国の現場で、ハンドルを握り、運転席のモニター画面に向き合い、レバーを操作、ボタンを押す。「あこがれのHOKAWNとして若者に注目されるよう、さらに安全と事業発展に磨きをかけたい」。達蔵会長は、玄関前にある創業者の像に誓う。