(有)川薩起工
代表取締役
石原 優子 氏
ISHIHAR YUKO
石原 優子 氏
PROFILE
 半農半漁の家に6人兄弟の長女として生まれる。父親の教師の紹介で名古屋市の企業に就職、定時制高校・向陽台高校を卒業後、帰郷。薩摩川内市の歯科医に事務員として勤務、結婚して幸せな主婦生活に入るが夫が病死。子育てをしながら内水面漁協の事務員を経て川薩起工に転職、経理を担当する。平成25年から同社の社長に就任。2人の息子は独立、現在市内に1人暮らし。好きな言葉は「志を持つ」。趣味は読書。休みの日は、8匹の愛猫に癒やされる時間を大切にする。同市久見崎町出身の64歳。会社所在地は、同市宮里町1633−8。
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経理担当から経営のトップに。

課題は従業員の質のアップと受注量確保、事業の安定軌道化へ奮闘

 「社長業は荷が重過ぎるからと、何度も辞退したのですが、結局引き受けることになって…」と、頼れる肝っ玉母さんは、土木業の経営トップの座を任されることになった。体調のすぐれない前社長の後を受けての就任。「いやぁ、怖いもの知らずって、私のことかも知れませんね」と、石原社長は、細腕で慣れない社業を支える。
 当面の課題は、下請けの受注確保と人材確保。「元々いろいろな応援団として協力してくれた企業のお陰で成長できた会社。家庭的な雰囲気を大切に信頼の絆を深めながら地道に努力して安定経営を軌道に乗せたい」と、次の節目である創業30周年を見据える。

現場風景 同社は、平成8年に中山忠喜氏(現会長)が創業した。当初は無一文に近い状態でのスタートで、いろいろな企業、友人、知人の協力があって独自でコツコツ勉強しながら立ち上げ、「地域に愛される企業」として育て上げてきた会社。業種は、土木、とび・土工が主力で平成26年度の完工高は1億4000万円。県のランクは、舗装C、土木D。石原社長は従業員として、この会社を経理面から支えてきた一人。小柄だが、しっかり者のイメージは、テレビドラマの細腕繁盛記の主人公とダブル。
 創業者の中山社長が体調を崩し、平成25年に社長を交代した。「経理面には多少自信があったものの、この業界は男社会のイメージが強い。打診は受けたものの責任とプレッシャーを感じて正直悩みました。引き受けるまで約一年間かかってやっと決断しました。経営トップとしては、まだまだすべてに渡って未熟。『経営が安定軌道に乗るまではアドバイスしてあげるから』という会長の言葉を信じて、押し切られる形でやっとの思いで引き受けました」と、交代時の思いを振り返る。
 経理に詳しいといっても建設業は業種も多く奥が深い。資金面、経営面から分析・検証を行い、人手不足など社会的要因にも左右されやすい環境、時代背景などを読み解く能力も求められる。「それに順応するためには日々勉強」と位置づける。
 社長就任以来、現場に出る機会も増えた。最初は右も左も分からず戸惑うことが多かったが、現場監督に聞きながら一から勉強した。今では作業着に着替え、ヘルメットをかぶり仕事の進捗状況を確認するため一日いくつもの現場を回る。工事現場での「お疲れさま」の声掛け作業も大分板についてきた。

石原 優子 代表取締役 公共事業が年々減少する中で元請け2割、下請け8割の構成。現在、社員6人、日給月給のパート・アルバイト14人の計20人のスタッフで現場を回しているが、一番の課題は人手不足による従業員の確保。特に仕事がきつい夏場は作業員が辞めて不足する。「若い人を入れてもなかなか続かないし育たない。いまの人は、気張い根性が足りないのかねぇー。話をしても意見が噛み合わない。50歳代を過ぎると、ある程度理解が進む」と、若い人が入ってくる魅力ある企業・業界育成を課題に上げる。
 社長を引き受けるに当たって中山会長と交わした約束がある。それは「何事も最後まであきらめずにやりきること。その先に光、未来が見えてくる」と、いうものだった。途中で投げ出さず、辛抱強くやりぬくことで、成果にたどり着くという教訓だった。
 同社では、人材育成の観点から社員の資格取得を応援、力を入れている。しかし、目標を持って取り組む人、ざっと考える人がいて両極端。「場合によっては、現場監督次第で現場を維持できないケースも出てくる。元請けの信用を得て、安定した仕事をもらうためには、会社の品格、現場監督の資格・人柄、リーダー力、作業員の質・人間性などが問われる」と、資質を重視する。

 会社の経営理念については、目下勉強中だそうだ。「家庭的な雰囲気、社員同士の和を大切にする中で地域社会に貢献できる会社へ」が当面のモットー。創業の歴史をひも解くと一から応援団の支えがあって築かれてきた同社。社名からも薩摩川内市を活性化させたいという思いが伝わる。公共工事が厳しいときは、解体、造成、側溝工事など民間需要を取り込みながら、金額の小さい物件でも口コミで評判が広がる信頼される企業へ――が、目標だ。
 「これからも地元の人から頑張れ、気張れと、ハッパをかけてもらえる企業を目指したい。ここ数年、完工高は伸びたものの、利益面では納得がいっていない。この反省を踏まえ、質のアップが問われている。見栄えだけでは、威張れない。今年度は売り上げよりも中身で勝負」と、方向性を見据える。
 「売り上げ、実質利益ともにバランスの取れた収益構造、内容の伴った地場中堅企業への脱皮」が社員の合言葉だ。「経理に明るいということは、将来の経営展望ができるということ。地域に信頼される、しっかりした中堅企業を目指したい」と、石原社長の目標は明快だ。