鹿児島建設新聞

元 橋口建設 大薗国秀

Profile

勝目国民学校高等科を卒業後、農業に従事したあと、同社に入社。昭和33年、さやさんと結婚、2人の子どもをもうけた。現在、孫は5人。平成13年、工事部長を最後に退職。会社の配慮もあり、70歳まで働いた。一級土木施工管理技士、火薬取扱い責任者、ダンプ、バックホウ、ショベルカーなど大型特殊の免許を所有。趣味は、ドライブがてら現場を見て回るのが好きと笑う。好きな言葉は努力。身長157cmと小柄。温厚なやさしさがあふれる。南九州市川辺町勝目の出身。84歳。

道路、河川、ダム、宅地造成など、担当した現場はゆうに100を超える。長年、土木工事の現場監督として働いたと聞き、荒くれの屈強な人を想像していたが、そこにいたのはやさしい顔の好々爺だった。「たいしたことは、しとらんよ」。小柄な大薗さんは、遠慮がちに静かにゆっくりしゃべり始めた。「現場が先生だった。われわれの仕事は形として残る仕事。完成した時の達成感がある。誇りを持ってほしい」と、若者へメッセージを贈る。

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南薩鉄道が走っていた頃、土木・建設資材などの運搬は鉄路に頼っていた時代。今のように重機類は発達していなかったため、大半を人力に頼る現場も多かった。

昭和25年6月、まだ19歳だった。創業者の正会長(平成11年に80歳で他界)から「うちに来んか」「いや、私は学校を出とらんから」「学歴はよか。なんでも最初は稽古からよ」との会話が入社のきっかけだった。南薩鉄道から支線となるトロッコの引き込み線路を敷設、資材を運ぶ。途中で横転することもあり、3、4人して押し上げ、元に戻して運ぶという繰り返し。まだ資材の運搬にはショケと呼ばれる竹篭が主流だった時代。それを2人で担いで運ぶ。「難儀したよ。でも懐かしいな」と、振り返る。

当時の仕事は、一から十まで手作業。河川工事の床掘りでは、松の杭を周囲に立て込み、スコップで人丈ほどの高さまで跳ね上げる。さらに掘り下げた後は、また跳ね上げる。囲い櫓と呼ばれる足場を組み上げて型枠を組み上げて行く。今はセパと呼ばれるメタル板をネジ込んで繋ぐが昔は番線を通して締める手作業。まさに肉体労働。「きつかったけどやりきった時の達成感はあった」と、語る。

重機が現場に入り始めたのは、30年代末から40年代にかけて。河川工事から橋づくり、港の護岸工事、ダムと業種はさまざま。まさに重機類の発展とともに現場を渡り歩いてきた。

一番、思い出に残っている仕事は、大浦町越路地区の海岸堤防の擁壁補強工事。潮の満ち干を考えてのタイムスケジュールの作業が続いた。重機が流されたり、締め切り部分から水が噴き出したりと作業は度々中断、頭まで浸かって仕事をしたこともある。昼夜を問わない仕事に、寝る暇もなく忙殺された。「厳しい現場だった。頭から離れないのが工期、そして作業員の安全確保。夜中に現場の状態を確認に行くこともしばしば。幸いこれまで大きなけがもなくやってこられたのは、指示に従ってくれた現場作業員の協力と強い思いで仕事に挑んだ責任感」と、現場を思い浮かべながら半世紀を回顧。

大薗さん

「長かったようで短かった」と、この道一筋の人生をベテランらしく振り返る姿はかっこいい。
 ベテランの領域に入り、どんな現場もこなすようになると、ややこしい現場で一通り段取りが着くと、「国秀がおらよ」と、別の現場へすぐ振られるようになった。入社を勧めてくれた正会長の「人間稽古の積み重ねだよ」の言葉を思い出し、歯を食いしばってがんばった。

人力主体の現場から便利な重機の世界へ。作業効率も上がり、生産性もぐんと良くなった半面、安全衛生面のあり方も問われる社会へ。「どんな現場も安全第一」を口すっぱく唱えてきた大薗監督の仕事に取り組む姿勢が会社の安全を支えてきた。

若い人、後輩へのメッセージを聞くと「そんな偉いことはしていませんから。ただ先輩たちの背中を見て育ってくれたらという思いはある。全員一丸となって会社を支えていただければ…」と、言葉を選んでしゃべる。

「半世紀の間、自分を支えたのは、会社のためにという責任感と、形になって現れる土木工事というモノづくりに携わる誇り。私にとって、多くの現場がいい先生でした。感謝、感謝です」と、締めくくった。橋口建設は、地場の土木工事会社としては中堅。「長年、会社を支えてきたベテランがいたからこそ、会社の今がある」と、北寛郎専務。「本当によくがんばっていただいた」と、こちらも感謝のエールを贈る。

更新日:2016年5月

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