(有)あさひ圧送
副社長
今吉 智幸 氏
IMAYOSHI TOMOYUKI
今吉 智幸 氏
PROFILE
 機械好きで樟南高校自動車整備科を卒業後、家業のアルバイトからスタート、見習い期間を経て現場と営業を経験、2年前に取締役副社長に就任した。コンクリート圧送技能者一級、登録コンクリート圧送基幹技能者の資格などを取得。車の修理や塗装が好きでバイクなども自分で整備する。趣味は、車の運転とバイクのツーリング。2人兄弟で兄の直樹さんは、会社の経理を手伝っている。
 副社長は「両親が最近、孫、孫とうるさくて…」とはにかむ。会社所在地は、薩摩川内市東郷町斧渕5111番21。同市出身の31歳。
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形になって残る仕事に誇り

若手の人材確保・育成が課題 特殊技術にやり甲斐 現場は日替わりメニュー

生コン圧送現場 「忙しい時は朝から晩まで。でも特殊技術でやり甲斐のある仕事。最初の一年を辛抱して乗り切ればコツも掴めるんですけどネ。形になって残る仕事。充実感があって結構楽しいですよ」。技術屋特有の気難しさはなく、淡々とした屈託のないその表情からは、仕事に対する自信がみなぎる。技能労働者不足が顕在化する中にあって「男らしい仕事。ぼくは根っから、この仕事が好きです」と、ひたむきに仕事に向かう姿勢は、周囲から見ても格好いい。
 ポンプ車を使って油圧・機械的圧力で離れた型枠内に生コンを圧送して、打ち込む仕事。厳しい作業環境、技能労働者不足も手伝って、生産性の向上、作業環境の改善が求められている。大型ポンプ車の規制緩和、ディストリビューターの採用、省力化の打設工法など多くの改善、開発も進むが、大半が人力に頼る作業。潤沢に仕事がある都市圏に比べ、公共工事に依存する度合いの高い地方とでは、その格差があまりにも大きい。
 常に生コンの品質を問われるだけにタイムスケジュールによる搬送、時間内の打ち込みが求められ、十分な休憩がなかなか取れない仕事。圧送用パイプや重いホースの持ち運び、生コンの打ち込み作業後のポンプ車の洗浄作業などきつい作業環境が若者の入職、定着化を阻む要因となっている。

コンクリートポンプ車 同社は、コンクリートポンプ業界に約15年間勤務した父親の輝幸さんが関連業者から「独立してやってくれないか」と頼まれて平成7年に創業した。小型〜大型のポンプ車、ダンプカー3台を保有、施工エリアは、薩摩川内市を拠点に遠隔地は熊本県の天草、葦北までと広範囲に渡る。社員数は8人。高さ19m〜33mと伸ばせるブームを備えたポンプ車の特殊性がメリットになり、施工現場は、市街地のマンションは勿論、トンネル、ダム、橋梁、鉄塔の基礎、法面、砂防・治山現場など多岐にわたっている。道幅の狭い山奥だったり、地盤の緩い急傾斜地と現場の状況も異なり、現場はその日によって日替わりメニュー。
 さらにヒューマンエラーだけでなく、コンクリートポンプ車には、車両の構造上、旋回台の倒壊、墜落、洗浄作業中の事故など危険性が潜んでいる。コンクリートモルタルの圧送、吹付け時は、ブーム先端からの延長配管は、水平方向の圧送作業を除き原則禁止など基本的な遵守事項も多い。「手元作業は必ず2人以上の立会いで行い、夏場の圧送作業は配管が詰まって破裂の危険性が増すので要注意。常に車両のメンテナンスが重要だ」と、強調する。「常に基本作業上の指差し確認が安全を守るキーワードになる。小さい事故でも信頼を失うことにつながる」と、事故防止に向けては気を抜かない。

 東日本大震災では、知り合いの会社からの要請もあり、宮城県にダンプカー3台を持ち込んで約2年間、復興支援に当たった。次々に遺体が漂着したことなど当時の現場の生々しい様子を聞いて衝撃が走った。最初は本当にショックだった。「支援を通じて建設業に携わる重要性も認識できたし、少しでも社会貢献できたことに誇りが持てるようになった。仕事を通じて自信にもつながった」と、当時を振り返る。

生コン打ち込み現場 少子高齢化で年々、ハードルが高くなる若年労働者の入職促進。「きつい中にも楽しい仕事で、やり甲斐のある仕事であるということを自覚してもらい、仕事に対する責任感を意識づけることで、その魅力を理解してもらえるはず」と、仕事への位置づけを明確にする。副社長に就任した時に輝幸社長からは「仕事の基本は一にも二にも安全第一。お客様から仕事の依頼があったら断るな」と、アドバイスを受けたという。課題になっている若手技能者の不足については「確かに忙しい時は朝が早くきついと思うが慣れたら楽しく、誇りも持てる仕事。暇な時は自由も利くし、やり甲斐がある。若いうちは、あれもやりたい、これもやりたいと望みも多いでしょうけどネ。一緒にがんばろうよと言いたいですね」と、入職促進にも前向きだ。
 「だって、ぼくらの仕事は形になって残るから」と、若い副社長は、はにかみながら微笑んだ。