鹿児島建設新聞

丸天建設 水口隆浩

Profile

高校中退後、家業の土木工事業を支えるが、資格取得の必要性から平成3年に鹿児島西高校通信過程を卒業、会社経営を軌道に乗せると同時に非行少年の雇用と自立更生に力を入れる。平成20年に代表取締役に就任。4人家族で、現在は夫人との2人暮らし。好きな言葉は誠実。鹿児島市出身の49歳。会社所在地は、鹿児島市魚見町142−8。

地域社会に貢献したい—との社長の思いは、いつしか非行少年の自立更生へ発展した。少年を積極的に雇用し、社長自ら時には威厳のある父、そして慈愛に満ちた母のような役割も担いつつ真剣に向き合って育て、企業経営の舵取りに励む。更生した少年たちは、監督や現場の工事責任者などとしてバリバリ仕事をこなす中堅に育ち、今では会社の経営を支える存在になっている。

同社の創業の歴史は、父・忠志さんが昭和33年に設立した土木会社・菅原建設が前身。隆浩さんが小学校4年生の時に一度倒産したが、一時期は親子鷹で会社を支え、丸天建設として再興した。社名は丸く天下を治めることに由来している。会社のロゴは、新選組の旗に見立てた四角の誠の文字、その下には七転び八起きの想いの波がそよぐ。負けずに何回でも起き上がるという気概が込められている。

町内会活動のほか、地域の子どもを見守る「ひまわりサポート隊」を結成するなど根っから世話好きだった忠志会長の地域活動を見て育った隆浩さんは、建設業を通じて地域社会に貢献したいとの思いが日増しに強くなっていった。

隆浩社長も若い頃、非行に走り、高校を中退した経験がある。会社の事業が軌道に乗り始めた頃、通信制の高校に入学、働きながら学ぶ仲間の姿に刺激を受け、卒業後は様々な資格取得にチャレンジ、見事に立ち直った。

そんな時、知り合いの生活指導の中学校教諭から「どうにも手をつけられない生徒がいる。力を貸してほしい」と、相談を持ちかけられたのが、非行少年の自立更生に力を入れるきっかけとなった。同じ境遇の少年の気持ちが分かるからこそ「仕事を通して自信をつけさせてやりたい」と、積極的に雇用に関わるようになった。

これまで約10人近くの少年を受け入れてきたが、時には再犯で逮捕され、面会に行くこともある。しかし、非行に走る少年たちは、根は真面目で素直なよい子がほとんど。ある日、再犯の少年と面会、一年半後に会った少年の顔つきが変わっていることに気づいた。「あっ、この子は立ち直るなと確信、後押しにも力が入った」と、隆浩社長。「受け入れる以上、絶対見放すことはない。よほどのことがない限り、何回でも許し、とことん真剣に向き合う。この積み重ねが更生につながり、社会にとけこむ自信になる」と、自分の子どもを育てる思いで責任を持って更生に力を入れる。

丸天建設の重機

同社の主力事業は、土木、解体、舗装、とび・土工。元請け4割、下請け6割。県の格付けはCクラスだが社員の真面目な仕事ぶり、施工技術などが評価され、宅地造成、解体工事などの業績も着実に伸びている。社長の呼び掛けで、資格取得費用は会社が負担、一級土木施工管理技士などの取得者も増えた。ダンプ・重機など保有車両台数も約30台に増え、職場に活気がある。社員数は50人。「社員の平均年齢は30歳代後半。退職率が一番低い会社」と自慢する。

建設業の職場は、まだまだ男社会。少年たちを社員全員で受け入れ、育てる気風も醸成され、社員同士の絆が強まり、さらに一体感が増した。「会社は家族」という意識も自然に育ち、一から十まで言わなくても、年の近い人が声をかける習慣もでき、しっかり全員で見守る体制が整いつつある。

隆浩社長は「少年を立ち直らせたいという思いは持ち続けているが、ボランティアだけでできるものでもない。受け入れ側に気持ちがあっても雇い入れる人数には限界がある。再犯防止の取り組みが安心・安全なまちづくりの実現につながる。行政からの手厚い支援の必要性も感じる」と、訴える。また、建設業が7割を超える協力雇用主会の一員として「県の入札格付けの評価では、加算見直しなども図ってもらいたい」と、受け入れ拡大へつながる施策の充実強化を求める。

荒平神社清掃活動

同社では、平成21年に73歳で亡くなった創業者・忠志さんの命日に合わせ、毎年社員総出で出身地の鹿屋市・荒平天神の清掃奉仕作業を行い、「建設業を通して地域発展に全力でまい進する」ことを誓い合っている。

更新日:2015年12月

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